【薬剤師向け】長期収載品の選定療養とは?わかりやすく解説!

薬剤師向け

令和6年10月から、長期収載品における選定療養の制度がはじまりました。「制度が複雑でわかりにくい!細かい資料をじっくり読む時間ないよ!」と思っている方はいませんか?患者さまの質問に、すぐに答えられなかった経験はありませんか?

まなみ<br>薬剤師ライター
まなみ
薬剤師ライター

日々忙しく業務をこなしながら、改定のたびに複雑な制度を正しく理解して、患者さまに説明するのはとても大変ですよね。昔の筆者もそうでした……(涙)

薬局薬剤師として働いていた筆者が、制度を正しく理解するために押さえるべきポイントをできるだけわかりやすく解説します。制度をきちんと理解したい、再度確認して自信を持って患者さまに説明したいという方はぜひ参考にしてください。

長期収載品の選定療養について

長期収載品の選定療養とは、今まで保険でまかなわれていた金額の一部を、保険外の特別料金として患者さまに自費で負担してもらう制度です。

近年、高齢化社会は加速し、医療費は増加する一方です。医療保険の負担を抑えて国民皆保険を守るために本制度が作られました。

まなみ<br>薬剤師ライター
まなみ
薬剤師ライター

国としてはこれを機に、ジェネリック医薬品への変更を推進したいと考えています。[1]

選定療養とは

選定療養とは医療上の必要性とは関係なく、患者さまが選択して特別料金を支払って受ける医療のことです。たとえば入院するときに、医療上の必要性はないにもかかわらず、大部屋ではなく個室を希望するのも選定療養の一つです。[2]

まなみ<br>薬剤師ライター
まなみ
薬剤師ライター

病院では以前から一般的な制度で、長期収載品の希望も令和6年10月から選定療養の対象となりました。

長期収載品とは

長期収載品とは、一般的に後発医薬品のある先発医薬品を指します[1]

長期収載品の中で選定療養の対象となる医薬品は、以下のすべてを満たすものと定義されています。

(1) 後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる「準先発品」を含む。)であること(バイオ医薬品を除く)。

(2) 後発医薬品が収載された年数及び後発品置換え率の観点から、組成及び剤形区分が同一であって、次のいずれかに該当する品目であること。

① 後発医薬品が初めて薬価基準に収載されてから5年を経過した品目(後発品置換え率が1%未満のものは除く。)

② 後発医薬品が初めて薬価基準に収載されてから5年を経過しない品目のうち、後発品置換え率が 50%以上のもの

(3) 長期収載品の薬価が、後発医薬品のうち最も薬価が高いものの薬価を超えていること。この薬価の比較にあたっては、組成、規格及び剤形ごとに判断するものであること。

出典:長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について|厚生労働省
まなみ<br>薬剤師ライター
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薬剤師ライター

上記のとおり細かい定義があるため一概には言えませんが、基本的には長期収載品が選定療養の対象と考えて良いでしょう。

(本記事でも以後、選定療養の対象医薬品を、長期収載品と表現します)

毎回対象の医薬品かどうかを判断するのはとても大変です。レセコンが自動で判断してくれるものもあるようですね。

厚生労働省のホームページに対象医薬品のリストが公開されていますので、必要に応じて確認しましょう。

選定療養の対象外となる3つのケース

長期収載品が処方されても、すべてのケースで選定療養の対象となるわけではありません。選定療養の対象となるケースなのか、正しく判断できる必要があります。

まなみ<br>薬剤師ライター
まなみ
薬剤師ライター

ここからは長期収載品における選定療養の対象外となる3つのケースを解説します。

曖昧な方は再度確認し、患者さまに自信を持って説明できるようになりましょう。

1.入院中の処方や退院時処方の場合

長期収載品の選定療養について、入院中の患者さまへの処方と退院時処方は対象外とされています。院外処方や外来患者さまへの院内処方のみが対象となります。(在宅医療における、在宅自己注射も選定療養の対象です)[3][4]

まなみ<br>薬剤師ライター
まなみ
薬剤師ライター

今後、対象が拡大される可能性もあるため注意しましょう。

2.薬局に後発品の在庫がない場合

薬局に在庫がなく後発品の調剤ができない場合は、患者さまに選択肢がないため対象外となります。近年は多くの薬で供給が不安定な状況が続いており、必要な在庫が確保できない場合も多いでしょう。あくまで患者さま希望で長期収載品を調剤した場合が選定療養の対象となるため、患者さまが選択できない状況であれば対象となりません。

3.医療上の必要性がある場合

医療上の必要性がある場合は、長期収載品における選定療養の対象外となります。医療上の必要性がある場合には、以下が挙げられます。

剤形の違いなどにより長期収載品を調剤する必要がある場合嚥下困難により長期収載品の剤形でないと飲めない場合や、吸湿性などの理由により長期収載品でないと一包化ができない場合など。この場合の判断は薬剤師も可能だが、医療機関に調剤した銘柄などを情報提供する必要がある。
患者さまの希望ではなく医師の判断の場合医療上、長期収載品の処方が必要だと医師が判断する場合。処方箋の記載によって患者さまの希望か医師の判断かを確認する。

医師が医療上必要と判断する理由には、以下が挙げられます。

  • 長期収載品と後発医薬品で承認された効能・効果が違う
  • ガイドラインにおいて長期収載品から後発医薬品への切り替えが推奨されていない
  • 以前、後発医薬品を飲んだ際に副作用があった、もしくは先発医薬品と後発医薬品で治療効果に差があったと医師が判断する患者さまに対しての処方 [4]
まなみ<br>薬剤師ライター
まなみ
薬剤師ライター

患者さまの希望ではなく、医師や薬剤師の判断で長期収載品を調剤する場合は、選定療養の対象外となることがわかります。

長期収載品における選定療養の注意点

そのほか、長期収載品における選定療養の注意点をお伝えします。

まずは消費税がかかる点に注意が必要です。

まなみ<br>薬剤師ライター
まなみ
薬剤師ライター

長期収載品の選定療養による特別料金は課税対象のため、消費税がかかることも患者さまに説明しなければいけません。

特別料金は大まかに言うと、長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1程度となるイメージです。その特別料金に消費税が加わります。厚生労働省のホームページに特別料金の詳しい計算方法が記載されているため、印刷しておき患者さまに見せながら説明すると良いでしょう。

生活保護受給者に対しては、医療上の必要性があると認められない限り、薬局に在庫があるものはすべて後発医薬品調剤することとなっています。生活保護受給者の希望だけで後発医薬品を調剤するケースは生じない、と疑義解釈に記載されています。[5]

疑義解釈は都度更新されるため、常に最新情報を確認しましょう。厚生労働省のホームページで疑義解釈などの通知が公開されています。

正しく理解し、わかりやすく説明しよう

薬局薬剤師には、薬の指導だけでなく、患者さまへのさまざまな説明が求められています。長期収載品における選定療養の制度もその一つです。場合によっては、説明してもなかなか理解していただけない場合もあるかもしれません。曖昧な説明ではなおさらです。

まずは自分が正しく理解し、わかりやすく患者さまに説明できるようになりましょう。

まなみ<br>薬剤師ライター
まなみ
薬剤師ライター

説明の仕方によっては、薬局のファン化、薬剤師のファン化につなげられるかもしれません。

患者さまの質問に、自信を持って答えられるようにしておきましょう。

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